人気ブログランキング | 話題のタグを見る

晩年に友の輪みのり彩輝き<志村ふくみの世界>
2006.01.22

English Here

志村ふくみの世界(その三)

 山や野を歩き草木を採り、自然から命をいただき染めて織る。
だれでも出来そうなことが先生の手にかかると魔法がかかったような織りの世界が生まれてしまうのである。
 シュタイナー、ゲーテの色彩論、フェルメール、カンジンスキー、平安の和歌、などなどへのなみならぬ感心、
山荘ではドフトエフスキーを読み、能見の四季の移ろいを体感し、、、、書いても書いてもつきない姿は、
もはや一人の人間では無いような気がする。

先生は書いている。
 ゲーテ色彩論から
 「光が現世界に入りさまざまの状況に出会うときに示す多用な表情を、色彩としてとらえたゲーテは
「色彩は光の行為であり受苦である」といった。この言葉に出会ったとき、私は永年の謎が一瞬にして解けた思いがした。
光は屈折し、別離し、さまざまの色彩としてこの世に宿る。植物から色が抽出され、媒染されるのも、
人間がさまざまの事象に出会い、苦しみを受け、自身の色に染め上げられて行くのも、根源は一つであり、光の旅ではないだろうか。
 生命の源、太陽から発した光が地上を美しい色彩で覆う日もあれば、思いがけない障害を受けて、影となり、
闇に達することもあり、地中にあって鉱石を染め、草の根に光を宿すこともあるのだと
すべての見えるものは、見えないものに触っている。聞こえるものは、聞こえないものに触っている。感じられるものは、
感じられないものに触っている。
という宇宙論にまでいたっているのである。
 ーーーーーーーーーーーーーー
  その志村ふくみの世界に数十年前に惹かれた一人の女性がいた。佐久間幸子さん。
いまでも楚々としてか細い中にも
ふくよかな心をかもしだしている、その女性は、まりやさんといわれている。
古き良き時代に新橋の芸者さんであった彼女は、井上靖をはじめ当時の文化美術界、美術評論家の先生方の重鎮に可愛がられていた。 
  1958年(昭和33年)第五回日本伝統工芸展で「秋霞譜」を一目見た彼女は、それから志村ふくみの世界にはいってしまったのだという。
今までの友禅などの着物を全部処分して、ふくみ先生の作品だけを着続けた。
伝統工芸展では毎年デパートの蛇腹が上がるのも待てずに入店して階段をかけあがる(エレベーターを待てなかったのである)。
一番に会場に着くなり彼女はまっすぐに先生の作品にタッチ=購入。

    仕事を辞めた彼女は青山の自宅の小さなお店で、先生の作品を紹介してきた。
すぐれた眼識をもって、精魂こめて織られた作品の中からとりわけ良い作品を選びぬいた。
佐久間さんご自身晩年を迎えた2004年、ご縁が生まれ彼女のコレクション六十数点が大津の近代美術館に
お嫁入りした。
「志村ふくみの紬織り一初期から現在まで一。
と題された展覧会の為に、志村先生は、体調の悪さを乗り越えて、源氏物語シリーズを含む新しい作品を数十点織り加えた。
さらに初期からの作品はS氏はじめコレクターからかり集められて、総数百数十点におよぶ作品が一同にかいしたのだ。
初日の四月十日に行われたレセプションが行われた。 しかし、
いつも志村先生の作品を見事にたおやかに着て入らした佐久間さんは紺絣で現れた。
その理由はその後のスピーチで明らかになった。
全てのものを美術館に納めてしまってご本人が着るものが無くなり、川端康成氏の形見の薩摩絣(がすり)を着ておられた由。
なんともすごい着物道楽、いや美術コレクターの清い晩年である。
(その4に関連記事)
その後期間中には日本中から志村ふくみファンが訪れた。

 草木から自然から色をいただくという先生の世界は、新しい還元の世界へと昇華して、さらに上り詰めている途中である。
一人の人間の命を織っているに違いない女の一生の最晩年をまっしぐらである。
82歳になられた志村ふくみ先生。末永くさらなるご活躍をお祈りしたい。

 先生からいただいたお手紙でいろいろ思い、週末に少し書いてみたくなったのだ。
語られない良い話の一つとして書き残しておきたくなったのである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
下は本邦初公開であろう志村ふくみ展覧会(2004年4月10日)のワンショット
晩年に友の輪みのり彩輝き<志村ふくみの世界>_a0031363_2215626.jpg
レセプションで志村先生、宮様とお祝いを述べるマリアさんこと佐久間幸子さん
晩年に友の輪みのり彩輝き<志村ふくみの世界>_a0031363_2585842.jpg

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
滋賀県立近代美術館、Exhibition of FUKUMI SHIMURA
http://www.biwa.ne.jp/~sg-kinbi/exhibition/exhibition_database/pressrelease/exhibition_04-1.html
知事のびわこ日記
http://www.pref.shiga.jp/chiji/biwako/archive/note72.htm
by pretty-bacchus | 2006-01-22 00:59 | ♠Art&美術,詩歌,展覧会,お稽古 | Comments(15)
Commented by Excugstug at 2009-02-10 16:09 x
Hi, cool site, good writing ;)
Commented at 2009-06-28 18:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-07-08 04:21 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-08-17 08:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-08-19 19:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-08-21 15:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-08-23 02:04 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-08-24 04:33 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-09-12 03:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-09-13 15:51 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-09-15 18:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-09-19 22:50 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-11-08 13:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-12-18 13:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2010-01-11 03:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
名前
URL
削除用パスワード


<< 雪かいて届いた箱は海の幸      神の手は苦労と努力の跡なりき(... >>