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井上冬彦写真展『サバンナ いのちの物語』を観る
2016年2月2日 火曜日 曇り 

 六本木・東京ミッドタウン「富士フイルムフォトサロン スペース2」で行われていた
井上冬彦写真展『サバンナ いのちの物語』を昨日観る機会を得た。

井上冬彦写真展『サバンナ いのちの物語』を観る_a0031363_23331433.jpg
(富士フイルムフォトサロンのURLより)

 真っ赤に輝く太陽を背にチータが弓なりに伸びて恍惚のよう、、、。
二頭のシマウマの向こうに足の長いピンク色のフラミンゴの群れが画面一杯に肩を寄せ合っている。
狭めを口にくわえて愛らしい瞳のバンビがこちらを見ている、、、。
昇る朝日におののき喜ぶ<朝日とキリン>、甘える子ゾウと優しい眼差しの<ゾウの親子>、
ヌーの川渡り、母親の後ろでじっと見つめる四匹の子供<チーターの家族>ライオン親子、、、などなど、
会場には大判の美しい写真が四十数枚が所狭しと並んでいた。
大きく引き延ばされプリントされた作品はどれもパワー一杯!

時には、どう猛と言われる野生の動物たちの表情はなんとも穏やかで優しいのはなぜだろう、、、、、
そんなことを思いながら、いつのまにか私は空と大地と動物たちの<園>に導かれていた。
自然と太陽と大地と生き物たちが一つになって会場は不思議な優しさに包まれていた。

 これは今現在の、この地球というプラネットに存在する<生きる命>の現の姿なのだろうか、、、、。
この地球上で生きている生きものたちがなんだかとても愛しくなってきた、、、、涙腺がこわれはじめた。
動物の親子やサバンナを行く動物たちの群れは、東京砂漠で生きている人間よりもずっと
ずっと
優しく幸せな眼差しをしているような、、、。
日が昇り太陽が燦々と輝き、一日の営みと生への戦いが終わり、やがて黄昏がやってきて陽は落ちて
漆黒の闇になるサバンナ。
そんな世界をこの写真家はどんなふうにどんなことを考えながら旅をしているのだろうか、、、と思った。

 撮った方にお会いしたいな、、、って思ったのは久しぶりだ。
いつもは写真展をみてもあまりその撮り手に合いたいと思うことはないのだが、
今回はどんな方がこの純な生きものと語らいあっているのだろうか、、、と想像した。

 会場の入り口のデスクには女性が座り、そばに背の高い優しい眼差しの男性がたっていらしたが、
その方なのだろうか、、、、、?
もう一度会場をゆっくりと一回りして、帰り際に一枚の印刷物が壁にはられているのに気がついた。
      <いのちの物語
『命』『いのち』の関係について、私の考えを述べてみたいと思います。
から始まる四十行ほどのプリントに見入ってしまった。

色即是空の『空』の概念にふれて『命』という存在に疑問を持ち始めたこの作者は、
大自然の中での生命の営みをみていると、「生と死には境はなく、死は別の生にかわっていくだけ」と
感じるようになったという。
そしてその悠久の時を生きる生命を、『いのち』と名付けたという。
それはミクロの世界観ではなく、『命』とミクロの世界観の間にあって、
『脳が感じることことのできる、より生命の本質に近い何か』と思うようになったという。

その感覚は、強い感覚刺激で優位脳の機能が満たされて、右脳優位になった状態のときや迷走の時に
現れるが一過性で、左脳の活動が再度始まると消えてしまう、、、と。
『いのち』を生む右脳が優位の時に現れる生き方は、慈悲に包まれていて、時間や空間の感覚がない。
そして『命』重視の生き方を認めつつも、少しずつ『いのち』の本質である愛(慈悲)に
目覚めていくことが、
向かうべき方向だと思うようになったのだという。

他者に貢献し続けること、時には意図的にも左脳機能を遮断して『いのち』を思い出すことの必要性。
そして最後に、
これらの気付きによって初めて、人として、医師として、「悲しみ・苦しみに満ちた現実の『命』を
どう生きるか」について考える出発点に立てたように思うのです。

と結んでいた。

 左目だけでは文字として認識できないほど悪い目なのに、私はじっと二度も読み返していた。
“素晴らしいですね〜〜〜” 思わずでた私の言葉をデスクの女性が聞いていたと同時に、
隣に立っていた男性が
“ありがとうございます。おわかりいただけるのですか、、、嬉しいです”と。
“いったいどのくらいの方がわかってくださるかと思いながら書きました”とも。
その方がこの写真を撮った方であり、この<いのちの物語>の思いを書かれた作者であった。

 しばらくお話しさせていただけた。
井上冬彦氏
ご職業は医師であるが、このサバンナの魅力にとり憑かれて二十数年前からもう何十回も、
この世界に通って撮影をつづけていらっしゃるという。
医師というお仕事と、趣味から昂じたサバンの生きとし生ける物たちの撮影という、
あるいみ二足のわらじを貫くのはどんなにか大変なことであろう、、、。

 三冊あった写真集のひとつの<Love Letter 母なる大地に思いお込めて><切ないほどに美しい。
サバンナから“いのち”の贈り物>を購入してサインをいただいた。

 深い思いを残したまま、おいとまをして隣のビルの地下の虎屋へ。
朱色の大きな暖簾をくぐると、白い壁とパーティションに黒い机と椅子という禅的なこの空間で、
季節の粟ぜんざいをいただいたあとに、この写真集を食い入るように何度なんども観た。
「サバンナでの感動を伝えたい」という作者の思いがどの作品にもあふれていた。

 満天の星の下で書かれた書き出しから、最後のページのフクロウの声を聞きながら、
きみの今日一日が幸せでありあすように。と動物たちに語りかける言葉で終わる
この百ページほどの写真集は、空と大地と動物たちの切ないほどに美しい様が写されていた。

 奥付をみて驚いた。
なんと写真展「サバンナが輝く瞬間、サバンナに心癒されて」とその写真集の出版で、
アマチュア作品の最高賞である<林忠彦賞>を撮った方だったのだ。

 人々を直し癒す医師という職業のかたわら、趣味のサバンナ通いで「サバンナの大自然の持つ癒しの力」
を撮って、今や自然写真家としてのプロのご活躍をなさり、写真と医療を統合したお仕事をできるとは
なんと素晴らしいことでしょう。

 そして今、人の「生と死」と自然界の「生と死」を長年みつめた体験から、
<命>と<いのち>というかたちをみつめて他者に貢献し、そして今思いを新たにして、
医師として、「悲しみ・苦しみに満ちた現実の『命』をどう生きるか」について考える
出発点に立てたように思うのです
>と結ぶこの日本男児に、心より杯を挙げたいと思うのでした。

井上冬彦写真展『サバンナ いのちの物語』を観る_a0031363_2340767.jpg
(白のパーティションと黒い机と椅子に、黒のお盆にのせられた朱色の漆器にもられた粟とアズキの
色が美しく、
食べ終わった後にそのまま置いておいてもらって、その上に本とプリントを置いてのスナップ)

井上冬彦写真展『サバンナ いのちの物語』を観る_a0031363_23414872.jpg
(この全文は次の写真集に掲載なさるとおっしゃっていました)


~~~~
 今日の病院の先生に不満を持ちながら臨んだこの写真展は偶然ではなく必然であったにちがいない。
医師であり写真家であるこの作者は、多くの人に癒しを与えて下さるお医者様!
そんな方にお目にかかれてほっとしているのでした。

 夜は幸せな気持ちでの食事となりました。

http://keico.exblog.jp/22355339/
平成28年2月1日(月) 曇り後小雪のち曇り
病院>フジフィルムスクエアー>粟ぜんざい>ヤリイカオンパレード


 〜〜〜〜〜〜〜
追記:
 井上冬彦氏のURLは沢山ありましたが、ご本人のを記しておきます。
   井上冬彦 オフィシャルサイト [Breeze in Savanna]
      http://www.fuyuhiko.jp
井上冬彦 オフィシャルサイト


by pretty-bacchus | 2016-02-02 23:58 | ♠Art&美術,詩歌,展覧会,お稽古 | Trackback | Comments(4)
Commented at 2016-02-04 01:36 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kurabusobae at 2016-02-04 07:36
良い展覧会をご覧になりました。収穫ですね。ナナハン拝
Commented by pretty-bacchus at 2016-02-04 23:02
Fさん、ありがとうございます。

Commented by pretty-bacchus at 2016-02-04 23:03
ナナハンさん、こんばんは。
一度行ってみたいと思っていて実現しなかったサバンナですし、なにより光と大地と動物が
優しかったのです。

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